アーカーシャ・クロニクル

 神無(かんな)エクステンション

 

 第1話  二度目の生

 

 やれやれ、とうとう-この時期が、やって来たか。
 ああ、僕の名はフェイキオス。
 この世界の観測者だ。
 まぁ、この世界、惑星アースを何周も何周も見ているワケさ。
 でも、この世界も何周もするウチに-ずいぶんと変わったモノだね。
 国の名前こそ変わらずとも、文化や言語や人種が微妙に違ったりとか。
 まぁ、でも、本質の運命は悲しいくらい変わらないんだけどね。
 その滅びの運命は・・・・・・。
 さて、君を彼女のもとへと案内する前に、記憶を取り戻してもらおう、如月(きさらぎ) ユウト-君。

 

 

 そして、俺の意識は暗転し、ザー、ザーと、壊れたテレビのような音が、鳴り響いた。

 

 それは夜の大通りだった。
 俺は遅くまで塾に通い勉強をして、その帰りだった。
 今は、高校2年の冬。
 受験まで後、一年を切った。
 今の内に詰め込んでおかないと-いけない。
 春になれば、運動部を引退した受験校の連中が、必死に勉強を開始し、追いついてくる。
 ああ、頭が-ぼんやりする。
 今日も頑張った。
 でも、何故だろう。この満たされない気分は・・・・・・。
 その時、俺は-ありえないモノを見た。
 小さな子供だった。サッカー・ボールで-その少年は遊んでおり、コロコロと道路に転がっていったボールを追いかけていった。
 車が普通に走っているのに。
 気付けば俺は駆けだしていた。
 バカみたいに何も考えずに、体だけ動いていた。
 そして、少年を突き飛ばし・・・・・・。
 気付けば俺は空に浮いていた。

 下では街路樹にぶつかった軽トラック、それを囲むように人だかりが、そして、その中心に血まみれの俺が居た。
『え・・・・・・あれ?嘘・・・・・・だろ?漫画とかじゃ無いんだからさ』
 しかし、浮いてる自分の手を見ると透けていた。
『俺・・・・・・死んだのか?』
 遠くから救急車とパトカーのサイレンの音が近づくのが聞こえ、俺は・・・・・・。

 

 

 そこには一人の少年が居た。
少年「やぁ、やっと思いだしたみたいだね。如月(きさらぎ) ユウト-君」
ユウト「・・・・・・俺は死んだのか?」
少年「死んだね。完全に脳と心肺は停止し、魂は肉体を離れた。運が無かったね」
ユウト「嘘だろ・・・・・・」
少年「まぁまぁ、そう-しょげる事は無い。不幸中の幸い、という言葉も-あるしね」
ユウト「ど、どういう事だよ・・・・・・」
少年「まぁ、生き返るチャンスが-あるって話さ」
ユウト「生き返る?そんな事-言われたって、死んだ実感も無いのに」
少年「だろうね。実感が-あったら、もっと取り乱している-だろうさ。ただ、彼女が待っている。付いて来てくれ」
ユウト「彼女?」
少年「死神・・・・・・だよ」
 と言って、少年はユウトに背を向け、歩いて行った。
ユウトは仕方なしに少年に付いていった。
ユウト「こ、ここは何処なんだ?」
 ユウトは左右をキョロキョロと見回しながら尋ねた。

 そこは細い道となっており、幻想的な風景が眼下に浮かんで居た。
少年「死後の世界。霊界・・・・・・と言った所かな」
ユウト「天国・・・・・・なのか?」
少年「違う。天国や地獄と言った世界と、ヒトの世界の狭間(はざま)の世界。だからこそ、君はヒトの世界に戻る事が理論上は可能だ」
ユウト「よ、良く分からないけど、あんたに従ってれば、俺は生き返れるのか?」
少年「それは、君しだいだね、ユウト君」
 と言って、少年はフフッと笑うのだった。
 そして、しばらく二人は歩くと、巨大な扉の前に辿(たど)り着いた。
少年「ここから先は一人で進んでくれ。彼女も-それを望むだろう」
ユウト「え・・・・・・あ、ああ。な、なぁ、あんたの名前は?」
少年「さっきも話したけど、もう一度、名乗ろうか。僕の名はフェイキオス。惑星アースの観測者だよ。さぁ、扉に手をかけて、望めば扉は開かれる」
ユウト「わ、分かった」
 そう言って、ユウトは扉に手を当てた。
ユウト「な、なぁ。フェイキオス。あんたとは、ここでお別れなのか?」
とのユウトの言葉に、フェイキオスは微笑んだ。フェイキオス「僕は何処にでも居るさ。特に君が僕を思い出している時は・・・・・・。如月 ユウト、君に幸(さち)あらん事を」
ユウト「ありがとう」

 そう答え、ユウトは力をこめ、扉をゆっくりと押した。
 すると、扉は以外にも簡単に開いていき、中から光が漏れてきた。
 そのほとばしる光にユウトの意識は飲まれていった。

 

 気付けばユウトは黒い部屋に居た。
 そこには大きな玉座があり、一人の銀髪の美少女が座っていた。
少女「・・・・・・やっと、来たのね」
 見れば、少女の体の周囲には幾本もの鎖が巻かれていた。
ユウト「き、君は・・・・・・」
少女「私の名はカンナ。如月(きさらぎ) ユウト。あなたを待っていたわ」
ユウト「俺を・・・・・・?」
カンナ「そう。あなたに頼みたい事が-あるの。それを引き受けてくれれば、あなたを生き返らせても-いいわ」
ユウト「た、頼みって・・・・・・」
カンナ「今、世界は滅びへと向かって居る。私は-それを止めたい。でも、私自身は今、見ての通り封じ込まれていて、直接-手を出せない。だから、ユウト、あなたに頼みたいの。あなたに世界を救う手助けをして-もらいたいの」
ユウト「ま、待ってくれ。世界を救うって、そ、そんな抽象的な事、言われても」
カンナ「じゃあ、具体的な話をしましょう。私が今から言う事を聞いてくれると約束するなら、あなたに生きる-
チャンスをあげるわ」
ユウト「あ、ああ・・・・・・」
カンナ「今、この世界には死の運命を持った少年・少女達が存在するわ。その少年・少女達を-その運命から救いなさい。それが条件よ」
ユウト「何人、救えば良いんだ」

カンナ「必要なだけよ。ただし、数十人-以内よ」
ユウト「・・・・・・救った後は?」
カンナ「後は自由に生きて頂戴(ちょうだい)」
ユウト「わ、分かった。なら、もう一つ、もし、俺が生き返って約束を守らなかったら-どうなる?」
カンナ「その時は、あなたは死ぬでしょうね。ただし、それは自然な形での死よ。私が殺すワケじゃ無い。今、私の力で-あなたを生き返らせても、あなたの死の運命は弱冠(じゃっかん)、引き延ばされたに過ぎない。放っておけば、また、別の形で死ぬでしょう」
ユウト「そ、そんな・・・・・・」
カンナ「ユウト、これは-あなたの為(ため)でも、あるのよ。因果応報という言葉があるでしょう。善因(ぜんいん)は善果(ぜんか)を生む。人を救っていけば、あなた自身も救われるでしょう」
ユウト「・・・・・・分かった。ともかく、生き返らせてくれるならそれでいい。あ、ただ、その救う対象は誰なんだ?」
カンナ「それは生き返ったらビジョンを送るわ。ここは-あなたの内面世界でもあるの。あなたが知るはずも無い情報は、生き返った時に、忘れてしまうわ」
ユウト「なら、今の会話は?」
カンナ「これは、あなたの今までの記憶を利用して構築しているから、大丈夫よ」
ユウト「そ、そうか。良く分からないけど、分かった」
カンナ「ああ。ただ、一人目は教えておくわ」
 すると、ユウトの脳裏に一人の女子高生の顔が浮かんだ。
ユウト「い、今のは・・・・・・」
カンナ「今のが一人目。あなたが最初に会うべき相手。彼女を探しなさい。彼女に会えば、あなたの運命は切り開かれるわ」

ユウト「わ、分かった・・・・・・」
 とのユウトの様子を見て、カンナは満足そうに、頷(うなず)いた。
カンナ「では、契約を」
 そう言って、カンナは右腕を少し、持ち上げ、小指を出した。
ユウト「え、ええと」
カンナ「指切りを交(かわ)すの。さぁ、早く」
ユウト「あ、ああ」
 そして、ユウトも右手の小指を差しだし、カンナの小指に触れさせた。
カンナ「では、契約を果たしますか?」
ユウト「ああ」
 すると、カンナの小指から魔力が流れ込んできた。
ユウト「ッ・・・・・・あ、熱いッ・・・・・・」
 ユウトは全身が熱を持つのを感じた。
カンナ「それが生きているという事よ。では、如月(きさらぎ) ユウト、あなたを陰(かげ)ながら見守って居るわ」
 とのカンナの言葉に、何かを答えようとするも、ユウトの意識は熱の中に消えていった。

 

 ・・・・・・・・・・
 気付けば、そこは病室だった。
医師「22時38分、ご臨終(りんじゅう)です・・・・・・」
 との医師の宣告がユウトの両親にされていた。
 それを聞き、母は泣き崩れ、それを父が体を震わせながら、支えた。
医師「力及(およ)ばず・・・・・・申しわけ-ございません。最善を尽くしたのですが・・・・・・。ただ、お悲しみの所、申しわけないのですが、ベッドの空(あ)き室の関係から、すぐに霊安室に移動を 」
ユウト「え・・・・・・ちょっ・・・・・・まだ、生きて・・・・・・」
 と、ユウトが起き上がると、医師は-びっくりして、「ヒエエッ」と声をあげながら、腰を抜かしてしまった。
 そして、ユウトの両親は-突然の事態に反応出来ていなかった。
 そんな中、ユウトは口を開き-とまどいながらも言うのだった。
ユウト「え・・・・・・ええと。ただいま、義父(とう)さん、義母(かあ)さん」
 と。

 

 そして、こうして、如月(きさらぎ) ユウトの物語は再び始まるのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

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