アーカーシャ・クロニクル

第1話 冒険者-達

 

 その酒場では賭博(とばく)が行われていた。
 熱狂が場を支配していた。
 人々は酒を浴びるように飲み、あぶらぎった食事を飲むように食べ、そして、賭け事を見るか-するか、していた。
 そんな中、一つの大きなテーブルでは、それ以上に大きな熱狂に包まれていた。
 テーブルでは二人の男を中心にポーカーの勝負が行われていた。
 一人の男は-がたいの良い傭兵の男だった。
 もう一人は-細身の南方系の男だった。ただし、彼は人間では無かった。彼こそ、ダーク・エルフと称される種族であった。
 その褐色の肌と長い耳も、完全にダーク・エルフの特徴をとらえていた。(厳密には肌が褐色だからダーク・エルフなのでは無い)

 

傭兵「さぁ、どうした、どうした?乗るか?そるのか?」
 と、傭兵はダーク・エルフに対し、言うのだった。
エルフ「降りだ」
 そして、アンティ(賭け金)が傭兵に支払われた。
ディーラー「では、次の勝負に移らせて頂きます。参加される方は?」
 すると、既に負けがこんでいる男達は退散していった。
傭兵「参加するぜ」
エルフ「俺もだ」
 その他にも数名が参加した。
 そして、全員がアンティを支払った。
 それから、特殊ルールでポーカーが始まった。
 トランプの約-半分が表にされ、残りの半分がゲームに使われるのだった。
 そして、ディーラーはカードを配りだした。
 各人に裏向き2枚、表向き3枚の-計5枚のカードが配られた。
 そして、いよいよゲームが始まった。
傭兵「ベット」

 と、傭兵は勝負を宣言した。
エルフ「コール」
勝負は続き、ディーラーは傭兵とエルフにカードを配った。
エルフ「レイズだ」
 そう言って、エルフは一気に全額を乗せた。
傭兵「正気か?」
エルフ「正気なワケねーだろ。俺のジョブ(戦闘職種)はギャンブラーだぜ」
 と、エルフは-にやりとして答えた。
 そして、傭兵とエルフ以外の参加者は皆、降りた。
一方、傭兵は配られた6枚のカードを見て、うなった。
 傭兵は、そのうちの6枚により、既に強力な役が完成していた。
傭兵(俺の手はストレート・フラッシュ・・・・・・。これ以上の手はあり得ないだろう・・・・・・。あり得るとすれば当然、ロイヤル・ストレート・フラッシュ・・・・・・。だが、既に表になっているカード。これを考えると、まず、奴の手札にはそれは-あり得ない。ジョーカーも俺が持つ。となると、あり得るとすれば、それこそ、スペードのロイヤル・ストレート・フラッシュ。ただ、
それのみだ。あり得ない)
 そして、傭兵は勝利を確信した。
ディーラー「カードが不足して居ますので、共通カードを一枚、中央に置かせて頂きます」
 と言い、ディーラーは中央に表向きにカードを一枚-置いた。

傭兵(よし、ハートだ。問題ない)
傭兵「ベットだ」
 と、傭兵は勝負を受けて立つ意を示した。
エルフ「コール」
 と、エルフは淡々と答えた。
 そして、ディーラーは裏向きでカードを一枚ずつ配った。
傭兵「ベット」
エルフ「コール」
 と、エルフは裏向きのカードを見ずに言った。
 二人の間に緊張感が走った。
傭兵(大丈夫だ。ありえない。あり得るハズが無い)
ディーラー「では、裏向きのカードを表にして下さい」
 傭兵は一気にカードを表にした。
 そこにはダイヤのストレート・フラッシュが完成していた。
 それに対し、観衆は沸き立った。
一方、エルフは最初に配られた2枚の裏向きカードを表にした。

 それを見て、観衆は-どよめいた。
 エルフは-この時点でロイヤル・ストレート・フラッシュを
完成させていなかった。
傭兵(なのに、全額を賭けて来たのか?何故・・・・・・。だが、最後の一枚、奴はチラリとも見ていない。一体)
 そして、エルフは最後に配られた裏向きカードに手をかけた。
 観衆は固唾(かたず)を飲んだ。
 エルフはカードを表にした。
 そこにはスペードのAが存在した。
 傭兵は視界が歪(ゆが)むのを感じた。
エルフ「俺の勝ちだ」
 と、エルフはニヤリとしながら言うのだった。
 それと共に、一気にあたりは爆発したかに沸(わ)き立った。
 傭兵は体をふらつかせながら口を開いた。
傭兵「な、何故だ・・・・・・何故・・・・・・?」
エルフ「理由なんかねーよ。何となく、ロイヤルがそろう気がしたから、あらかじめ全額を張っただけさ。結果、あんたも乗ってくれて、良かったぜ」
 すると、少年〈小人族〉がエルフに向かって近づいて来た。

少年「トゥセ、か、勝ったの?」
トゥセ「おう、勝ったぜ、モロン」
 と、エルフのトゥセは答えた。
モロン「そ、そっか。これで、今日は泊まれるかな?」
トゥセ「泊まれるどころじゃねーぜ。大勝ちだ。借金してまで賭けたかいが有ったぜ!」
 と、トゥセは言うのだった。
モロン「そ、そっか、団長も喜んでくれるよね」
トゥセ「おう。内緒で団長の剣を担保に金を賭けてたけど、きっと許してくれるだろ」
 と言って、トゥセは笑った。
 すると、勢いよく机が叩かれた。
 そこには怒り狂う傭兵の姿があった。
傭兵「い、イカサマだ・・・・・・」
トゥセ「おいおい、イカサマなんて、どうやってすんだよ?」
傭兵「う、うるせぇッ!そこのチビ、そいつは人形士だろうッ!きっと、人形を使って他人の手札を見て居たんだ、そうだろうッ!」
トゥセ「おいおい、見るだけじゃ、ロイヤルはそろわないだろう?」
傭兵「だ、だが、あの時点で、他人の手札を見れれば、ほとんど全てのカードを把握(はあく)-出来た。そして、山札のカードは残り3枚。その内の2枚にスペードのAが有れば、ロイヤル・ストレート・フラッシュは完成したワケだ。それなら全額を張るのも納得が行く」

トゥセ「あ、なる程なぁ。そういう考えも有るのか。いやぁ、勉強になるなぁ」
傭兵「黙れッ!このイカサマ野郎ッ!ぶっ殺してやるッ!」
 と言い、傭兵は剣に手をかけた。
トゥセ「おいおい、この俺とやろうってのかよ?」
 そう言ってトゥセはトランプに手をかけた。
 人々の間に緊張感が走った。
 その時、扉が開かれた。
 そして、男がトゥセに近づいた。
男「トゥセーーーーッ!やっぱり、ここかぁッ!お、お前、俺の剣を勝手に質に入れやがったなッ!おいッ!なんちゅう事、してくれるんだよぅッ!」
 と、男は涙目になりながら叫んだ。
トゥセ「ゲッ、だ、団長・・・・・・。いや、それは後で謝りますから。それより今、取り込み中で・・・・・・」
傭兵「あ?テメー、こいつの所属するギルドのリーダーか?どう、落とし前つけてくれるんだ?」
男「え?えぇ?トゥセ、何したんだ?」
傭兵「こいつはなぁ、イカサマしたんだよ、イカサマッ!」
男「えぇッ!トゥセ。お前、イカサマしたのか?」
トゥセ「いや、してませんって」

モロン「団長、トゥセは-そんな事、しないよ」
男「確かに、トゥセはイカサマはしないな。イカサマは、な」
トゥセ「うぅ、団長、質に入れた事は謝りますから。今、メッチャ大勝ちしたんですよ。でも、このオッサンが-いちゃもん付けて」
傭兵「あ?てめぇ、ケンカ売ってんのか?」
トゥセ「あ?やんのか、お前?俺と団長、メッチャ強いぞ、正直、片方だけでも-お前なんか、いちころ・・・・・・?」
 すると、団長の男は床に両膝(りょうひざ)を付き、謝っていた。
トゥセ「だ、団長?」
団長「すみませんでしたー。うちのモノが誠(まこと)にもうしわけありませんでしたーッ!ほ、本当にすみませんでしたーッ!お金は全額-返しますので、どうか、お許しをーッ!」
 との団長の言葉に、傭兵はキョトンとした。
傭兵「ま、まぁ、金を返すなら許してやらん事もない。ただし、そいつの賭け金も置いてきな。それが条件だ」
トゥセ「ハァ?てめー、調子のってんじゃ」
団長「はい、はいッ!わかりました。じゃあ、失礼します。さ、行くぞ、トゥセ、モロン」
 そして、団長は二人の腕を引っ張って酒場を後にするのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
 夕暮れを団長達3人の男はトボトボと歩いていた。
トゥセ「団長・・・・・・すいません・・・・・・」
団長「うん・・・・・・いいよ。今日は野宿だけど、雨じゃなくてよかったなぁ」
モロン「団長、僕、野宿は好きだよ」
団長「おお、モロン。お前は良い奴だなぁ、ほんと」
 との団長の言葉にモロンはニコニコした。
トゥセ「でも、団長、剣・・・・・・どうしましょう?」
団長「・・・・・・どうしようかな・・・・・・仕方無いから、仕事、
   探そうか・・・・・・」
 すると、遠くから一人のガタイの良い-中くらいの背の男が駆けてきた。
男「あっ、団長ッ!良かった、トゥセは見つかったんですね」
団長「いや、アーゼ・・・・・・それが、大変な事になってしまった」
 そして、団長はアーゼに事情を説明するのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
アーゼ「馬鹿ッ、このトッセの馬鹿野郎ッ!何やってんだッ!」
トゥセ「いやぁ・・・・・・そんな事、言われても・・・・・・。反省はしてるんだぜ、本当に」
アーゼ「お前、どうすんだよ。団長の剣・・・・・・」
トゥセ「うぅ・・・・・・何か、クエスト(依頼)を攻略すれば・・・・・・」
団長「でも、高いクエストは難度も高いからなぁ。
   正直、命の危険を冒(おか)してまでやる気はしないんだよなぁ」
アーゼ「ですが、団長。流石(さすが)に、いつものように、飼い猫の捜索とかのクエストじゃ、いつまでたっても金は貯まりませんよ・・・・・・」
団長「だよなぁ・・・・・・。はぁ、じゃあ今回だけは高いクエストに挑戦しようか?今回だけな」
トゥセ「よっしゃ、腕が鳴るぜ」
 と言って、トゥセは腕をぶんぶんと回した。
団長「不安だ・・・・・・」
 と、団長は-つぶやくのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
 次の日、団長達はクエスト屋へと向かった。
 そこのカウンターでは、一人の中年女性が男女のカップルに色々と近辺の名所を教えていた。
 そして、しばらくして、男女のカップルは去って行った。
団長「おばちゃん、何してたんだい?」
おばさん「ありゃ、こりゃヴィルじゃないかい。久しぶりだね。いやね、クエストの斡旋(あっせん)だけじゃ-やってけないから、最近じゃ観光の斡旋(あっせん)もしてるのさ」
 と、おばさんは、団長ヴィルに言った。
ヴィル「それは大変だね。それで、何か良いクエスト無い?」
おばさん「うーん。あんまし無いねぇ。今、目玉のクエストは、古代迷宮の探索とかだけど」
トゥセ「何すか、それ?」
おばさん「どうも、大きな魔力反応が生まれたみたいでね。中で魔石か何かが結晶化したんじゃないかって話でね」
ヴィル「なる程。しかし、それじゃ、強大なモンスターも発生してるかもね」
おばさん「だろうねぇ。だから、危険度は高いよ。あんた向けじゃ無いだろうねぇ」
トゥセ「いやいや、おばさん。今回の俺らは違うぜ」
おばさん「へぇ、そりゃあ珍しいねぇ。どうしたんだい?こりゃあ、雪でも降りそうだよ」
アーゼ「色々と-ありまして・・・・・・」

おばさん「まぁ、なんでも良いさ。じゃあ、登録しときなさい」
ヴィル「えぇと・・・・・・おいくらですか?」
おばさん「紹介料と登録料で合せて300タルだよ」
ヴィル「・・・・・・300タル・・・・・・」
おばさん「そうさ。古代迷宮の入場料もこみだからね。だとうな金額だろう?」
ヴィル「・・・・・・おばさん、別のクエストは無いですか?」
おばさん「あんた達、本当に金が無いんだねぇ・・・・・・。分(わ)かった。まぁ、あんた達には色々とお世話になったしねぇ、今回は後払いで良いよ。でも、今回だけだよ」
ヴィル「ほ、本当ですか、あっありがとうございます」
おばさん「いいんだよ。しっかり、稼いできな。それと、今回のクエストは共同クエストだからね。事前に、準備会があるから、忘れないように」
ヴィル「はい。本当に、ありがとうございます」
 と、ヴィル達は-おばさんに礼を言うのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
 ヴィル達がテントに戻るとモロンが食事の支度をしていた。
モロン「あっ、団長、トゥセ、アーゼ。どうだった?」
トゥセ「良いクエストをゲットしたぜ!」
モロン「そっか、良かったね。あ、食事は-もう少しかかるから、しばらく、ぶらぶらしててよ」
ヴィル「了解。じゃあ、少し散歩でもするか」
 そして、ヴィルとトゥセとアーゼは散歩に赴(おもむ)くのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
トゥセ「しかし、団長。共同クエストですよ、共同」
ヴィル「そうだな。気が重いよ」
トゥセ「何でですか?女の子の冒険者も居るかもしれないじゃないですか?」
アーゼ「お前なぁ。クエストに出会いを求めるなよ」
トゥセ「なら、他にどこで求めれば良いんだよ?俺達、男4人、むさすぎるんだよッ!」
ヴィル「まぁまぁ、気が楽で-いいじゃないか」
トゥセ「えぇ?団長、絶対パーティに女の子は必要ですって。実際、真面目(まじめ)に検討するべきですよ」
ヴィル「・・・・・・トゥセ、それには-いくつか問題がある」
トゥセ「な、何すか?俺、女の子がパーティに入るなら、今の十倍くらい頑張れると思うんです」
ヴィル「まずな・・・・・・俺達は今、滅多(めった)に宿に泊まれてない。確かに女性の冒険者で、そういうのを気にしない人は多いが、それでも、俺達の野宿率は異常だ。街の目の前で今日も野宿するワケだしな・・・・・・。それに・・・・・・たぶん、俺達は臭い・・・・・・」
アーゼ「団長・・・・・・何か、俺、かなしくなって来ました」
トゥセ「だっだっ、だったら、俺、毎日、泉で全身、水浴びしますッ!たとえ、真冬の氷点下でもッ!」
ヴィル「まぁ、仮に俺達が必死に身だしなみを整えたとしてだ。やはり、金が無い・・・・・・。女性の冒険者は、結構、装備を気にするモノだし、まぁ、食事はモロンの味付けが有るから平気だが」
トゥセ「ようは金って事ですよね?なら、俺、必死に稼ぎます!必死に稼ぎますから団長ーーーーッ!」
ヴィル「さらにだ・・・・・・女性の冒険者は大抵(たいてい)、ごつい」

トゥセ「・・・・・・団長、やっぱり、パーティは今のままで良いです」
アーゼ「トゥセ、お前、細身の女性に戦闘を期待するなよ・・・・・・」
トゥセ「う、うるせぇッ!あっ、そうだ。魔法使い-とか、治癒(ちゆ)術士の女性なら-どうっすか?あ、やべ、美人の魔法使いとか、まじ興奮するわー」
ヴィル「そういう人達はな、引っ張りダコで、すでに他のギルドに取られてるさ」
トゥセ「じゃ、じゃあ、仮にフリーの人が居たとして、どうっすか?」
ヴィル「だとしてもだ。男性と女性が混じったパーティはあまり良くないぞ」
アーゼ「なんでです?」
ヴィル「大抵(たいてい)、恋愛沙汰(ざた)に発展して、パーティが分解する。三角関係になったり、もしくはカップルが破局したり、そうなると色々と面倒(めんどう)だろ?」
トゥセ「う、うぅ、団長、なんで-そんなネガティブな意見ばっか、なんすか?クゥ、団長のバカーーーーーッ!」
 と、叫び、トゥセは走って行った。
ヴィル「あ・・・・・・」
アーゼ「ま、まぁ、放っておきましょう。腹がへれば、すぐに帰ってくるでしょうし」
ヴィル「それもそうだな」
アーゼ「いやぁ、しかし、団長は色々と経験が豊富なんですね」
ヴィル「まぁ、学院で色々とな。もっとも、俺は端から見てただけだけどな・・・・・・」
アーゼ「ま、まぁまぁ、元気出してくださいよ」

ヴィル「俺だって、俺だってモテた・・・・・・い?」
 そこまで言って、ヴィルの目は-ある方向に釘付けとなった。
 そこでは一人の男の剣士を、女性の冒険者-達が囲んでいた。
アーゼ「う、うらやましい・・・・・・ハーレムですね、団長・・・・・・」
 すると、その剣士はヴィルの方を見て、足を止めた。
 ヴィルは-とっさに顔をそらした。
男「あれ・・・・・・ヴィル先輩じゃないですか?」
ヴィル「・・・・・・」
 と、ヴィルは無言で固まっていた。
女「シオン、どうしたの?」
 と、とりまきの女性の一人がたずねた。
シオン「ん?あぁ、昔、世話になった人で・・・・・・」
 と、その男は説明するのだった。
アーゼ「・・・・・・だ、団長、シオンって-まさか、あのシオンじゃないですよね?」
ヴィル「・・・・・・そのシオンなんじゃないの?」
アーゼ「ええっ、剣聖シオン、七英雄シオン、その人ですかッ!」

ヴィル「そうなんじゃないの・・・・・・」
シオン「いやいや、そんな大したモノじゃないよ。俺は運が良かっただけで。第一、ヴィル先輩も、あの大戦では相当に活躍(かつやく)されていたし。本来、表彰されても良いくらいで・・・・・・」
ヴィル「・・・・・・」
アーゼ「おおッ、知られざる団長の過去が今、少し、明らかに」
ヴィル「いやいや、俺、軍規違反で処刑されそうになったくらいだぞ・・・・・・」
シオン「まぁ、あれは色々と複雑でしたからね・・・・・・」
ヴィル「ま、まぁ・・・・・・俺の話は-いいよ。それより、シオン、何で-お前がここに?」
シオン「いえ、たまたまですよ。俺達は-ずっとこうして、気ままに旅をしてるんです」
アーゼ「うらやましい・・・・・・こんな美人さんに囲まれて・・・・・・」
シオン「そ、そうかな?ただ、パーティには後2人、男も居るけど」
ヴィル「まぁ、元気そうで何よりだよ」
シオン「はい。それより、聞きましたよ。昨日、酒場で土下座(どげざ)して謝ったそうですね」
ヴィル「え・・・・・・あぁ、まぁな・・・・・・」
シオン「ヴィル先輩、話を聞いた限り、あそこで謝る必要は無かったんじゃないですか?」
ヴィル「まぁ、そうかも知れないけど、刃傷沙汰(にんじょうざた)は嫌だったんだよ。あの傭兵さん、結構、手練(てだ)れに見えたし」
シオン「変わりませんね・・・・・・。いつも、そうやって、損な道をゆく。でも、先輩、俺は先輩の-そういう所、好きですよ」

ヴィル「はは、ありがとな」
女「シオン、宿の時間が・・・・・・」
シオン「あぁ、そうだな。じゃあ、すいません、先輩。
失礼します」
ヴィル「あぁ、またな」
シオン「ええ、明日のクエストの準備会で会いましょう」
 そう言って、シオン達は去って行った。
アーゼ「いやぁ、すごく良い人でしたね。しかも、何より、かっこいい・・・・・・。それでいて、剣聖で七英雄で、・・・・・・・そりゃあ-モテますよね」
ヴィル「あぁ・・・・・・」
 すると、ヴィルは体を震わせた。
アーゼ「どうしました?」
ヴィル「い、嫌、今、妙な寒気(さむけ)がしてさ・・・・・・」
アーゼ「風邪(かぜ)ですか?気をつけてくださいね。クエスト前ですし」
ヴィル「ああ・・・・・・今日は暖かくして寝るよ。しかし、
あの女の人・・・・・・」
アーゼ「どの人ですか?」

ヴィル「ほら、宿の時間-とか言ってた人。多分、シオンの本命(ほんめい)の彼女」
アーゼ「あぁ、あの魔法剣士の人ですか。特に綺麗(きれい)でしたね。正直、あんな綺麗な人、生まれて初めて見ましたよ」
ヴィル「何か・・・・・・怖かったな・・・・・・。人間ばなれしてると言うか・・・・・・・あやうい美しさ-というか・・・・・・」
アーゼ「そうでしたか?まぁ、団長は、もっとホワホワしたタイプが好みかも-しれませんけど」
ヴィル「うーん、俺は、俺の事をマジで好きになってくれる人だったら、誰でも良いんだけどなぁ。あっ、でも、ストーカーは嫌だぞ。とは言っても、ストーカーなんて-居たためし無いけど」
アーゼ「・・・・・・ともかく、テントに戻りましょう」
ヴィル「・・・・・・だな」
 そして、二人はテントに戻るのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
 テントでは、モロンとトゥセが食事をしていた。
モロン「あ、団長、お帰りなさい。鍋(なべ)、出来てるよ」
ヴィル「お、今日は少し寒いからいいな。それと、トゥセ、戻ってたのか」
トゥセ「あ、はい。それより団長、聞いてくださいよ。さっき、剣聖を見ちゃったんですよ。剣聖シオン。俺の記憶が間違って無ければ、あれは間違い無いですよ。いや、マジですからね。マジマジっすよ」
ヴィル「うん。そうだね」
トゥセ「えぇ?なんすか、その素っ気(そっけ)ない反応は。嘘じゃ無いですからね」
アーゼ「トゥセ、何と、剣聖は団長の後輩だった」
トゥセ「は?何-言ってんだ、アーゼ?」
ヴィル「いや、本当だ。剣の院で一緒だったんだよ。それで、大戦も途中までは同じ部隊で戦ってたんだ」
トゥセ「えぇッ!マジですか?それって、メチャクチャすごいじゃないですかッ!うわ、すご」
アーゼ「アッ!」
モロン「ど、どうしたの、アーゼ?」
アーゼ「た、大変な事を思いだしてしまった」
ヴィル「ん?どうした?鍋、うまいぞ」
アーゼ「それどころじゃないですよ、団長。さっき、シオンさんは-さらっと言ってたから忘れてましたけど、彼のギルド、明日のクエスト準備会に参加するって言ってましたよ」

トゥセ「はぁ?う、嘘だろ?止めてくれよ・・・・・・。宝箱とか、魔石とか、全部、持ってかれちまうじゃねぇか。あれ、早いモノ勝ちなのに・・・・・・」
ヴィル「ま、まぁ、あいつは金には困ってないし、あまり、ヒドイ事は-しないと思うが・・・・・・それでも、今回はあんまし儲(もう)からないかなぁ・・・・・・」
 と言って、ヴィルは肩を落とすのだった。
モロン「だ、団長、元気出して。ほら、お代わり」
 そう言って、モロンはヴィルのお椀(わん)に具を注(そそ)いだ。
ヴィル「うぅ、ありがとな、モロン。お前は世知辛(せちがら)い現状において、唯一の癒(い)やしだよ・・・・・・」
 そう言って、ヴィルは汁を飲むのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

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