アーカーシャ・クロニクル

 第12話 ツリー・フォート

 

 大木は-さらにヴィルとファントムのもとに近づいて来て、そして、止まった。
ファントム「チィッ・・・・・・ツリー・フォートか・・・・・・」
 と、ファントムは忌々(いまいま)しげに呟(つぶや)くのだった。
 そこには、大木の形をした何かがおり、ファントム達を覗きこんでいた。
 その大木のような何か-は明らかに意思を持っており、その顔にあたる部分は、さながらヒゲの生えた老人のようにも見えた。
ヴィル「テ・テヒシ、来てくれたのかッ・・・・・・」
 と、ヴィルは-その歩く大木-テヒシに対し言った。
テヒシ『久しいな、ヴィルよ。して、何やら苦戦しておるようじゃが?』
ヴィル「ああ。助けてくれないか?」
テヒシ『よかろう。お主には恩もある。さらに、猫の王、ケット・シーよりの頼みでもある。加勢しようぞ』
 との歩く大木-テヒシは言うのであった。
 それに対し、ファントムは笑い出した。
ファントム「おいおい、おいおいおいッ!こりゃあ、すごい。まさか、あの気むずかしいツリー・フォートが人間に協力するか?ハハッ、面白い。面白くなってきた」
テヒシ『若造よ・・・・・・。痛い思いをしたくなくば、今すぐ森を去れ。我々、ツリー・フォートは元来、争いを嫌う。どうじゃ?』
ファントム「ハッ、争いこそが、僕の道なんでね」
テヒシ『・・・・・・いたしかた-あるまい。やるぞ、ヴィルよ』

ヴィル「ああ・・・・・・」
 そう言って、ヴィルは剣を構えた。
ファントム「ハッ、こりゃあ、本気、出さねーとなぁッ!」
 すると、ファントムは魔石を取りだし、体内に埋めこんだ。
 それと共にファントムの周囲から、異様な魔力が-ほとばしった。
ファントム「さぁ・・・・・・。始めよう・・・・・・」
 そして、ファントムは詠唱無しで、炎の中規模-魔法を放った。
 それと共に、森は焼けていくのだった。
テヒシ『愚かモノがッッッ!』
 そう叫び、テヒシは巨大な拳を振り下ろした。
 しかし、ファントムは-その拳を器用に避け、逆に、猛毒の剣を突き立てた。
 その横からヴィルは渾身の一撃を放つも、ファントムは大きく跳んで避けるのだった。
テヒシ『・・・・・・毒か』
 と、テヒシが呟(つぶや)くと、その傷口から樹液が出て、毒を流し出した。
ファントム「ハハッ、そうだった。ツリー・フォートには、毒は効かないんだったなぁ。ハハッ。こりゃあ、楽しくなって来たよッ!」
 そう叫び、ファントムは燃える森の中、魔力を高めるのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
 一方、トゥセ達は依然(いぜん)、危機的な状況にあった。
 少女アリスの黒い波動が、トゥセ達を襲っていた。
 トゥセ達は今の所、結界で守られていたが、それにはヒビが入り、いつ壊れても-おかしく無い状況だった。
カシム「ッ、後、五分と保ちませんッ!」
 と、叫ぶのだった。
 すると、トゥセは-ため息を吐いた。
トゥセ「・・・・・・俺に考えが-ある。カシム、結界を縦に伸ばしてくれ」
カシム「わ、分かりました。ですが、そうすると、魔力の消費が激しくなり、後、数分で結界は壊れますッ!」
トゥセ「十分(じゅうぶん)だ」
 そして、カシムと茶猫のケシャは、結界を縦に伸ばし、
かなり上方の部分まで波動を防いだ。
アーゼ「トゥセ、何を考えてるッ?」
トゥセ「アーゼ、俺を上空に垂直に飛ばしてくれ」
アーゼ「分かった。じゃあ、俺の手に乗れ」
 そして、トゥセがアーゼの手の上に乗り、アーゼは-腕を思い切り上げ、トゥセを上空に放った。

 トゥセは波動と結界の外へと跳んだ。
 そして、上空から少女アリスを確認し、再び、結界の中へと戻って行った。
アーゼ「お、おいッ!今、何かしたのか?」
トゥセ「いいから、もう一度、投げてくれ」
アーゼ「分かったッ」
 そして、アーゼは言われるがままに、トゥセを上空へと放った。
 しかし、トゥセは再び、落ちてくるだけだった。
アーゼ「おいッ!トゥセッ!何やってんだッ!」
トゥセ「・・・・・・もう一回やってくれ」
 と、トゥセは答えるだけだった。

 

 その様子を上空からハンター達は見ていた。
包帯「何やってんだ、あいつら?」
 と、包帯の男は首をかしげ、言った。
獣使い「まさか・・・・・・マズイッ!あのダーク・エルフを止めないとッ!」
 そして、獣使いのエルフは大ガラスに命(めい)じて、トゥセ達の所へと向かおうとした。
 しかし、その時、石つぶてが森から飛んできて、大ガラスの羽に命中した。
 そして、大ガラスは-よろめき、ハンター達も成すすべも無くあらぬ方向へ落ちていくのだった。

 

 一方、トゥセは何もしないで、再び、落ちてきた。
カシム「トゥセさんッ!あと、一分以内で何とかしてくださいッ!」
 と、カシムは悲痛な声をあげた。
トゥセ「やれやれ、はぁ、女の子を傷つけるのは-しのびなくてよぅ」
アーゼ「何、フェミ気取ってんだよッ!早く-やってくれッ!」
トゥセ「分かった。もう一度、放ってくれ」
アーゼ「ああ」
 そして、アーゼは急ぎ、トゥセを上空に放った。
 トゥセはタイミングを計っていた。
 丁度、重力により、速度がゼロになる瞬間、つまり、空中に完全に浮いている一瞬を求めていた。
トゥセは今、世界をスロー・モーションのように感じていた。
トゥセ(まぁ、仕方ねぇよな・・・・・・。俺も死にたくねぇし。それに、こっちにもゴブリンとはいえ、女の子が居るワケだしな・・・・・・)
 と、凍れる時の中、緩(ゆる)やかに上昇しながら思うのだった。
 そして、その瞬間が来た。
 今、トゥセは完全に空に静止していた。
 トゥセの瞳は完全に、少女アリスの脳天を捕らえていた。

トゥセ(悪いな)
 次の瞬間、トゥセの渾身(こんしん)の一撃が放たれた。
 カードは上空から、少女アリスめがけて降り注ぎ、黒い波動を貫き進んだ。
 そして、少女アリスの脳天にカードが突き刺さった。
 一方で、あまりにも、その一瞬に-かけすぎたため、トゥセは空中で体勢を崩し、落ちてきた。
 それをアーゼは受け止めた。
アーゼ「やったのかッ?」
トゥセ「わ、分からねぇ・・・・・・」
カシム「いえ・・・・・・波動が弱くなって来ました・・・・・・」
 と、カシムは言った。
カシム(しかし・・・・・・トゥセさんが、カードを放った瞬間、背筋が凍った・・・・・・。トゥセさん。このヒトは、むらが-あるが、最高潮の時の実力は神業(かみわざ)に達している)
 と、体を身震いさせ、思うのだった。
 その頃、少女アリスは-よろけていた。
アリス「あ・・・・・・れ?何、これ・・・・・・。頭、何か、刺さってる。取ろう・・・・・・」
 そして、アリスはカードを取ろうとするも、上手く取れなかった。
アリス「う・・・・・・うぁ・・・・・・。痛くないけど・・・・・・むかつく」

 そして、アリスは-ぶつぶつと言い出した。
アリス「あぁ・・・・・・お腹、お腹、減った。魂を食べたいよぅ。魂、とっても、おいしいから。あぁ、あぁ、おいしかったなぁ、パパとママの魂。おいしかったなぁ。いっぱい、食べて、大きくならないと・・・・・・。大きくなって、パパとママに褒(ほ)めてもらおうっと」
 と、呟(つぶや)き、笑い出すのだった。

 

カシム「・・・・・・少女の波動が解けました」
トゥセ「おっしゃッ!今の内(うち)に逃げようぜッ!」
 すると、地響きが鳴り、大木がトゥセ達に近づいて来た。
 そして、木人(きびと)、フォーク・ツリーが一人、やって来た。
アーゼ「こ、これって。団長の言ってた」
木人「急ぎ、乗れッ!」
 そう言って、その若い木人はトゥセ達を-その大きな手の平の上に乗せた。
 すると、少女アリスの笑い声が止まった。
アリス『こちそう、いっぱい。逃げちゃ駄目。今日は、お野菜も-たっぷりなの』
 と言い、大規模-魔法を展開した。
 そして、トゥセ達に対し、巨大な重力場が発生し、引きずりこもうとした。
アリス『アハハ、アハハハ、こっち、こっちだよ。こっちにおいでッ!アハハハハハッ!』
 と、アリスは笑いながら、クルクルと回り-踊るのだった。
木人「ヌゥ・・・・・・」
 トゥセ達を乗せた木人は必死に地面に根を張り、重力場から逃れようとしたが、それでも、少しずつ吸い込まれそうに-なっていた。
 アーゼ達も必死に木人の手に掴(つか)まり、吸い込まれないようにしていた。

アーゼ「まずいッ!トゥセ、何とか、ならないのかッ!」
トゥセ「ん・・・・・・あぁ・・・・・・」
 と、トゥセは気のない返事をした。
カシム「カードを放っても吸い込まれてしまいますよ、恐らく」
トゥセ「ん、ああ。そうだな・・・・・・」
 と、トゥセは-ぼんやりとしながら答えた。
アーゼ「トゥセッ!お、お前、この危機的な状況を理解していないのかッ?」
トゥセ「え?だって、もう、勝負、ついてね?」
アーゼ「へ?」
トゥセ「しゃあ無い。魔力も落ち着いたし、やるか。アーゼ。俺の体、支えていてくれ」
アーゼ「あ、ああ」
 そして、アーゼはトゥセを片手でつかみ、支えた。
 トゥセは重力場を正面から見据(みす)えた。
トゥセ「まぁ・・・・・・仕方ない事もある」
 そう言って、トゥセは指を鳴らした。
 次の瞬間、少女アリスの頭に刺さっていたカードが-爆発した。

 そして、アリスの魔法は解け、重力場は消滅した。
アリス「ッ!」
 しかし、アリスは再び、魔法を発動しようとした。
トゥセ「遅いぜ・・・・・・」
 と、悲しげに呟(つぶや)き、トッセはカードを数枚、アリスに向けて投げた。
 それは再び、アリスの体に突き刺さり、爆発していった。
 煙が晴れると、アリスは両膝(りょうひざ)を地面に着いていた。
アリス「あ・・・・・・れ?変だな。詠唱・・・・・・出来ない」
 と、アリスは-ぶつぶつと呟(つぶや)いていた。
 すると、ハンター達がアリスの周りを囲うように現れた。
包帯「チッ、奴ら、ぶっ殺すッ!」
 と、包帯の男は激昂(げっこう)しながら叫んだ。
獣使い「アリスさん、大丈夫ですか?」
 と、獣使いのエルフはアリスに尋ねた。
アリス「え?全然、平気だよ。むしろ、長年の頭痛が取れた感じ」
獣使い「そ、そうですか・・・・・・」

 と、獣使いは困ったふうに答えた。
獣使い「コホン、さて・・・・・・。反逆者の皆さん。ファントムさん-は、ああ-おっしゃってましたが、私としては無駄な殺生は避(さ)けたいモノと、思っています。そこで、どうでしょう。次の条件を飲んでくだされば、この場を引く事を約束しましょう」
トゥセ「な、なんだよ・・・・・・」
獣使い「あぁ、その前に、私の名前はクエルト。こっちの包帯の男はサギオス。私達はギルド、デスゲイズの幹部(かんぶ)です。他にも幹部は居ますが、今日は別の所でお仕事中でして」
トゥセ「いいから、要点を話しやがれッ!」
 とのトゥセの言葉に、クエルトは微笑(ほほえ)み、口を開いた。
クエルト「ええ。一つは、そのゴブリンを私達に引き渡す事。これは絶対です。そして、もう一つ。それは、ダーク・エルフのカード使いさん、あなた-です」
トゥセ「お、俺?」
クエルト「ええ。私は-あなたが欲しい。あなたの-その才能、そんなギルドの中では、磨(みが)かれる事なく、終わってしまう。もったいない-とは思いませんか?」
 とのクエルトの言葉に、トゥセは-あぜんとするのだった。
トゥセ「な、何言ってんだ、お前?」
クエルト「私は本気です。さぁ、どうでしょう。カード使い-さん」
 と言って、クエルトはトゥセに対し、手を差し出すのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

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