アーカーシャ・クロニクル

 第11話  古(いにしえ)の森

 

 いよいよ、ヴィル達は猫の国を旅立つ事となった。
ケット・シー「古の森には使者を送っておいたよ」
ヴィル「ありがとう-ございます。何から何まで、お世話になりました」
 と言って、ヴィルは頭を下げた。
ケット・シー「・・・・・・ヴィル。気を付けるんだよ。外にはハンター達が-うろついている。彼らは並のハンターじゃ無い。君達ですら勝てるか-どうか」
ヴィル「戦うつもりは-ありません。俺達は、ただ、レククちゃんを島に返して-あげたいだけですから」
ケット・シー「そうかい・・・・・・。ヴィル、そして、ヒヨコ豆-団の諸君、さらに、レクク達よ。無事を祈っているよ」
ヴィル「ありがとう-ございます」
 そして、ヴィル達は扉をくぐり外の世界へと戻っていくのだった。
 すると、茶猫がヒト型に変化し、ケット・シーの隣に立った。
茶猫「陛下・・・・・・。私も彼ら-に付いていきたく存じます」
ケット・シー「ケシャ。君の力は-この猫の国には必要だよ。君を長期間-外に出すワケには行かない。残念だけどね」
茶猫「はい・・・・・・」
ケット・シー「大丈夫だよ。彼ら-なら、きっと・・・・・・?」
 すると、ケット・シーは目の前が歪むのを感じた。
茶猫「陛下?」

ケット・シーの意識は幻想的な空間に包まれていた。

 

そこは記憶の空間だった。
 そこでは幼いケット・シーが銀髪の女性に抱きかかえられていた。
女性「ケット・・・・・・。私に万一の事が-あったら、東へ逃げなさい。東には-あなた達の故郷が有ると言うわ。そこなら、きっと、ここよりも安全な暮らしが出来るハズよ」
ケット「シャーリア・・・・・・。やだよ。僕、シャーリアと一緒に居たいよ」
 と、幼いケット・シーは半泣きで女性に言うのだった。
シャーリア「そうね・・・・・・。でも、忘れないで。私に何が起きても、私の魂は-あなたを見守っているわ。ケット・・・・・・。愛してるわ」
ケット「うん、僕も・・・・・・」
 ケットはシャーリアに甘えるのだった。

 

 血花が咲いた。
 人々の悲鳴が-あがった。
 黒の女皇帝シャーリアは-悲しげに微笑(ほほえ)み、そして、倒れた。
 ケットには何が起きたか分からなかった。
 ただ、シャーリアは二度とケットを抱きしめる事は無かった。

 

 ケット・シーの意識は幻想の空間で目を覚ました。
 そこには懐(なつ)かしい女性が立っていた。
ケット「シャー・・・・・・リア?」
シャーリア「ケット。久しぶりね。」
ケット「何で?どうして?だって、シャーリアは・・・・・・」
シャーリア「私は死んでいないわ。長い、長い眠りについただけ。目覚めの時は近いわ」
ケット「ほ、ほんとなの?」
 と、ケット・シーは猫の王らしからぬ口調で、シャーリアに
尋ねた。
シャーリア「ええ。でも、それには-もう少し時間が、かかるの。だから、ケット。それまで、彼らを助けてあげて。どうか、あの勇敢(ゆうかん)なる冒険者-達を助けてあげて。それが、私からの-お願い」
 すると、シャーリアの姿は薄れていった。
ケット「シャーリアッ?やだよ、消えないでッ!」
シャーリア「大丈夫・・・・・・また、会えるわ・・・・・・。でも・・・・・・どうか・・・・・・」
 そして、シャーリアの姿は消えていった。

 

 ケット・シーは猫の国に意識を戻していた。
茶猫「陛下?」
ケット「・・・・・・ケシャ。ヴィル達の所へ行ってくれ」
茶猫「は、はい。ですが、本当に-よろしいのですか」
ケット「大丈夫。少しの間なら、僕が-この国を守るから。でも、必ず帰って来て欲しい。必ず」
茶猫「はい。必ずや。ユア・マジェスティ」
 と言い、茶猫は胸に手を当て、頭を下げるのだった。
 そして、次の瞬間には茶猫は居なくなっていた。
ケット「これで-いいんだよね、シャーリア?」
 と、ケット・シーは呟(つぶや)くのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
 ヴィル達は早歩きで進んでいた。
 すると、急に茶猫が現れた。
ヴィル「君は・・・・・・」
 と、ヴィルは呟(つぶや)いた。
茶猫「ケット・シー陛下よりの命(めい)で参りました、ケシャと申します。どうか、旅の同行を-お許しください」
 と、茶猫ケシャは言うのだった。
ヴィル「ああ。よろしく頼むよ」
 そして、今、ヒヨコ豆-団に新たなメンバーが加わったのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
 それから、一日が経過した。
 ヴィル達は古(いにしえ)の森へと到達していた。
ヴィル「よし、入ろう」
 すると、遠くで少女の絶叫が聞こえた。
 さらに、黒い波動がヴィル達を捕らえた。
ヴィル「走れッ!」
 そして、ヴィル達は一目散に駆けだした。
カシム「ヴィルさん、駄目ですッ!追いつかれますッ!」
 すると、上空から、ハンター達が降ってきた。
 今、ヴィル達は完全に囲まれていた。
 黒ローブのハンター達は不気味に笑っていた。
 それに対し、トゥセやアーゼ達は魔力を高め、いつでも戦闘に入れるように準備をしていた。
ファントム「やぁやぁ、ヒヨコ豆-団の諸君。やっと、お会い出来たねぇ」
 と言って、ハンターのボスであるファントムは低く笑った。
ヴィル「お前は・・・・・・ファントム。ギルド、デスゲイズのリーダー」

ファントム「おや、僕の名をご存じで?」
ヴィル「悪名高い-元暗殺ギルドの頭領(とうりょう)・・・・・・」
ファントム「そこまで知っているなら話が早い。一応、聞こうか?抵抗をしなければ、痛み無く殺そう。それは約束する。さぁ、どうする?」
トゥセ「って、どっち道、殺す気まんまんじゃねぇかッ!」
ファントム「あぁ。その通りだよ、カード使いくん」
 と言って、ファントムは口端(くちはし)を上げて、不気味な笑みを浮かべた。
 それに対し、トゥセは気圧(けお)され、後ずさった。
 すると、ヴィルは手信号でアーゼ達に意思を伝えた。
アーゼ(団長を囮に、俺達が脱出する・・・・・・。クソッ、他に方法が無いとはいえ、やるせない・・・・・・。団長も、どうして-いつも自分を犠牲にしようとするんだ。でも、信じよう。今は、ともかく、命令どおりに-やるだけだ)
 と、アーゼは決意を新たにした。
ファントム「さぁさぁ、どうする?」
ヴィル「・・・・・・一つ聞きたい。金で解決できないのか?」
ファントム「おっと、そんな金が-あるのかな?万年、貧乏のヒヨコちゃん達に」
 とのファントムの挑発にトゥセは一瞬、激昂(げっこう)しかけたが抑えた。
ヴィル「ある、と言えば-どうする?」
ファントム「フッ、残念だけど、一度-受けた依頼は完遂するのがプロだろう?フッフッフ。さぁ、おしゃべりは終わりだ。始めよう」

 そして、黒ローブのハンター達は抜刀し出した。
ファントム「かかれ」
 そして、黒ローブ達はヴィル達に一斉(いっせい)に襲いかかった。
 すると、トゥセは閃光のカードを一気に放った。
ファントム「ははッ、それは効かないさ。ネタが割れてる」
 と言って、ファントムは笑った。
 見れば、黒ローブ達は、特殊な眼鏡をしており、閃光対策を施していた。
 しかし、次の瞬間、アーゼが次々と黒ローブの男を殴り飛ばし、道を切り開いた。
アーゼ「早くッ!」
 そして、アーゼを先頭に、トゥセ達は包囲網から脱出するのだった。
ファントム「Shitッ!追えッ!」
 とのファントムの命令に黒ローブの大半がアーゼ達を追いかけた。
 一方で、ヴィルは-その場に残っていた。
ヴィル「失策だったな。一斉に襲ってくれば、その分、包囲網が狭まる。多数-対-少数では、基本、長引かせて、少しずつ、少数を削っていくモノさ」
ファントム「ハハッ、そりゃ、ご教授どうもッ!」
 そう言って、ファントムは長剣を抜き、ヴィルに斬りかかった。

 それをヴィルは剣で受け止めるのだった。
 そして、二人は次々と剣技を交(かわ)した。
 ただし、ヴィルは剣技のみを使っているのに対し、ファントムは時折(ときおり)、魔法も織りまぜており、厄介であった。
ヴィル(こいつ・・・・・・詠唱が早い。一つ一つの威力は大した事ないが、場慣れしているッ)
 と、思いながら、ヴィルは必死にファントムの魔法を弾(はじ)いていった。
ファントム「ハハッ!お楽しみは-これからだッ!ヒヨコのリーダーさんッ!」
 そう言い、ファントムは魔力を高めるのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
 一方で、アーゼ達を追う黒ローブ達は、少しずつ-その数を減らしていた。
 トゥセやアーゼだけで無く、カシムや茶猫のケシャも活躍しており、次々とハンター達を倒していったのだった。
 その様子を上空から、ハンターの幹部達が見ていた。
「おい、やべぇんじゃ無いのか?」
 と、包帯を巻いた男が尋ねた。
「なら、そろそろ私達も行きますか」
 と、獣使いのエルフが答え、指笛を鳴らした。
 すると、彼らを乗せた大ガラスはトゥセ達の所へと、降り立とうとした。
 トゥセは-それを見て、カードを放つも、包帯の男の-かぎ爪が、それを阻(はば)んだ。
獣使い「アリスさん、アリスさん、起きて下さい。出番ですよ」
 そう言って、獣使いのエルフは-アリスの拘束具を全て解除し、地面に降ろした。
 そして、獣使いは大ガラスを上空へと飛ばし、場を離脱した。
 今、アリスの人形のような顔は、あらわに-なっていた。
 そして、アリスはニッコリとトゥセ達に微笑(ほほえ)んだ。
 しかし、段々と、その様子が豹変(ひょうへん)し、アリスの両目から

黒い涙が流れ出した。
トゥセ「やべぇッ!」
カシム「結界を張りますッ!」
茶猫『私も手伝います』
 そして、カシムと茶猫ケシャは強力な結界を張った。
アリス『ヒィヤァァァァァッァア!』
 との絶叫と共に、強大な黒い波動がトゥセ達を襲った。
カシム「ッッッ!」
 カシムは必死に結界を黒い波動を防(ふせ)ごうとするも、アリスの波動は強力で、結界は今にも砕けそうだった。

 

包帯「ハハ、こりゃ、案外、楽に終わったかもなぁ」
 と、上空で包帯の男は言うのだった。
獣使い「だと、いいのですが・・・・・・」
 そして、ハンターの幹部達は-様子を見守るのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
一方で、ヴィルとファントムは死闘を繰り広げていた。
 他のハンター達は、ファントムに加勢しようとしては居たが、両者の戦いが-あまりにレベルが違い過ぎて、何も出来ずに、手をこまねいて見ている事しか出来なかった。
 両者は傷だらけであるも、その剣撃は少しも衰(おとろ)えていなかった。
ファントム「ハハッ、やるねぇッ!」
 そう叫び、ファントムは魔法を発動し、氷の刃を降らせた。
 しかし、ヴィルは-それらをまともに弾こうとせず、一気にファントムに肉薄し、一閃した。
 ファントムは-とっさに避けるも、腕に大きな傷を負った。
 一方で、ヴィルも、肩などに氷の刃を受けていた。
ファントム「こりゃあ・・・・・・参ったね。予想以上だ。依頼金に対し、釣り合わなすぎるね・・・・・・」
ヴィル「・・・・・・なら、今からでも引いてくれ」
 とのヴィルの言葉に、ファントムは笑った。
ファントム「冗談だろう?だって、僕の勝ちは見えている」
ヴィル「何?」
 すると、ヴィルは視界が歪むのを感じた。
ヴィル(これは・・・・・・)

ファントム「おっと、ようやく効いてきたか。そう、毒さ。僕の剣や魔法には猛毒を付加してある。ハハ、まぁ、並の人間なら-もっと早く毒が-まわるハズだからなぁ。流石(さすが)に元-聖騎士だけは-ある」
ヴィル「クッ・・・・・・」
 ヴィルは体をふらつかせながらも剣を構えた。
ファントム「ただ・・・・・・もう少し、楽しませてくれるかと、思っていたよ。何せ、ドワーフの国では、君は《巨人殺しのヴィル》とまで呼ばれて居るのだからさぁ」
ヴィル「俺はッ・・・・・・俺だッ!」
 そして、ヴィルは魔力を全身に通した。
ファントム「ハハッ、魔力で自分を無理に動かすか。まるで、操(あやつ)り人形のようだね。まぁ、いいさ、いいさ。その糸を一本、一本、断ち切ってやるさ」
 と言って、ファントムは2本目の剣を抜き、双刀を構えた。
 それに対し、ヴィルは苦しげに、顔をしかめた。
 その時、地響きがなった。
ファントム「何だ・・・・・・?」
ヴィル「これは・・・・・・まさか・・・・・・」
 地響きは強まって来た。
 それと共に、大木がヴィルとファントムに近づいて来たのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

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