アーカーシャ・クロニクル

第3話 迷宮クエスト

 

 ヴィル達は迷宮に入っていた。
トゥセ「いやぁ、カビ臭いっすね」
ヴィル「情報によれば、この迷宮の難度は-それ程、高く無いらしいが、気を抜くなよ」
トゥセ「分かってますよ」
 すると、奥から魔物の咆哮(ほうこう)が響いた。
アーゼ「始まったって感じですね」
ヴィル「ともかく、俺達は慎重に進もう」
 そして、ヴィル達は-罠などを確認しながら、ゆっくりと迷宮を進むのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
トゥセ「結構、来ましたね」
ヴィル「だな。だけど、周りに他のギルドが見当たらない。妙だな。そんなに広い迷宮じゃないハズだが」
 すると、何かが蠢(うごめ)く音がした。
 そして、奥から巨大なナメクジが数体、這(は)ってきた。
ヴィル「まずいッ、トゥセ、早く倒せッ!」
トゥセ「りょ、了解ッ!」
 そして、トゥセはカードを巨大ナメクジに向かって投げつけた。
 すると、ナメクジから体液が-ほとばしっていった。
 さらに、何枚も何枚もカードを投げつけるとナメクジ達は沈黙した。
ヴィル「フゥ・・・・・・だが、まずいな・・・・・・」
アーゼ「ですね・・・・・・・」
 見れば、周囲はナメクジの体液で-まみれていた。
トゥセ「団長・・・・・・この体液って、メチャクチャ粘るヤツですよね?」
ヴィル「ああ・・・・・・毒とかは無いが、粘るな・・・・・・」
アーゼ「団長、どうします?」

ヴィル「・・・・・・仕方ないだろ。ネバネバしながら進むしか無いだろう・・・・・・」
トゥセ「マジっすか・・・・・・」
 そして、ヴィル達はネバネバに足を突っ込(こ)むのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
 一方で剣聖シオンのパーティは迷宮の最深部へと到達していた。他にも数組のギルドがおり、いよいよ、最深部を守る巨大モンスターとの対決が始まるのだった。
 シオンが扉を開くと、そこには巨大な骸骨(がいこつ)が長刀を持って、待ち構えていた。
 そして、骸骨はシオン達を認識するや、体中をカタカタさせて笑い、襲いかかってきた。
シオン「行くぞッ!」
 とのシオンの叫びと共に、戦闘が開始された。

 

 ・・・・・・・・・・
 一方で、ヴィル達はネバネバの中、必死に前に進もうと、
もがいていた。
トゥセ「チクショウッ!何で、よりによって、ナメクジと遭遇しちまったんだッ!」
 と、片足を上げながら叫んだ。
アーゼ「お前が、もう少し、綺麗に倒せば-こんな事にならなかったんだよ・・・・・・」
トゥセ「お、俺のせいかよ・・・・・・クゥ、でも、これって、本当は魔法を使えば、ネバネバ取れるんですよね」
ヴィル「ああ、清めの魔法でな」
トゥセ「団長。やっぱり、女魔法使いはパーティに必要ですって」
ヴィル「はいはい。ともかく、今は出る事だけ考えような」
モロン「団長・・・・・・足、疲れたよ・・・・・・」
ヴィル「モロン・・・・・・我慢だ」
モロン「うん・・・・・・」
 そして、ヴィル達は-ようやく半分程を進んだ。
 すると、一人の男が前方から-やって来た。
 その男は何処(どこ)か浮きよばなれしており、不思議な雰囲気(ふんいき)をただよわせていた。

男「大丈夫ですか?」
ヴィル「貴方(あなた)は?」
男「私はカシムと申します。今回は、ソロ(一人)で迷宮の攻略に来たのですが、ゆき詰まってしまいまして」
トゥセ「ソロ?そりゃあ、すごいっすね」
カシム「いえいえ。魔物から上手く、隠れて進んで居るだけです」
 と、カシムは朗(ほが)らかに答えた。
カシム「それで、よろしければ-その粘つきを解除しましょうか?」
アーゼ「い、いいんですか?」
カシム「はい。多分、私の術で解除できます」
ヴィル「ただ、カシムさん。俺達は今、お金もレアなアイテムも無くて、その-お礼の方がちょっと・・・・・・」
カシム「いえ。お礼は要りません。私はあなた達に興味が湧(わ)きました。あなた達のオーラは輝いている。よろしければ、一時で良いので、同行させていただけないでしょうか?」
トゥセ「団長ッ!これぞ、渡りに船ですよ!」
ヴィル「ああ、そうだな。じゃあ、お願い出来ますか、カシムさん?」
カシム「ええ。では」
 すると、カシムは舞(ぶ)を始めた。
 そして、大気に魔力が集結し、カシムが足で床を打ち鳴らすや、一気に術式が完成し、粘(ねば)つきを浄化していった。

アーゼ「お、おお・・・・・・」
トゥセ「すげーッ!全然、粘(ねば)つかねー」
ヴィル「今の術式は一体?」
カシム「仙人術と呼ばれるモノです。魔物の恨みの気を晴らしました。あの粘つきは、ナメクジの怨念(おんねん)が宿っていたのです」
ヴィル「魔物の怨念(おんねん)・・・・・・」
トゥセ「ぞっとしない話っすね」
モロン「え、えぇと、カシムさん、ありがとうございました」
カシム「いえ、お気になさらず」
 そして、ヴィル達もカシムに礼を言った。
ヴィル「えぇと、ではカシムさん。今回のクエストを同行してくださるのですよね?」
カシム「はい。よろしければ、ですが」
ヴィル「是非(ぜひ)、お願いします」
 そう言って、ヴィルは手を差し出した。
 その手をカシムは握り、二人は握手を交(かわ)すのだった。

 

 迷宮をヴィル達は歩いていた。
トゥセ「いやぁ、しかし、ほんと、助かりましたよ」
カシム「いえいえ」
アーゼ「でも、ほんと、思わぬ所から助けが来ましたよね」
ヴィル「だな」
 すると、カシムが立ち止まった。
モロン「どうかしたんですか?」
カシム「いえ・・・・・・終わってしまいましたね・・・・・・」
ヴィル「え?」
 すると、笛の音が響いた。
 それは最深部の攻略が済んだことを示す音だった。
トゥセ「あ、あぁ・・・・・・間に合わなかった」
ヴィル「ともかく、音の方へ向かおう」
 そして、ヴィル達は駆け足で進むのだった。

 

 ・・・・・・・・・・
 骸骨(がいこつ)の魔物は力尽き、倒れていた。
 そして、剣聖シオンは-その聖剣を鞘(さや)にしまった。
 周囲のギルド・メンバーはシオンに対し、惜しみない賞賛を贈っていた。
シオン「フゥ・・・・・・」
エレナ「お疲れ、シオン」
シオン「あぁ。ありがとう」
ニア「しっかし、私の出番は無かったねぇ」
 などと、シオンのギルド・メンバーは-和(なご)やかに会話をしていた。
 そんな中、ヴィル達は-そこに辿(たど)り着いた。
ヴィル「お、遅かったかぁ・・・・・・」
 と、ヴィルは肩を落としながら言った。
シオン「先輩。すみません・・・・・・」
ヴィル「いや、いいんだ。実は道中でナメクジに会っちゃってさぁ」
シオン「あぁ・・・・・・あれは魔法使いがパーティに居ないと厄介(やっかい)ですよね」
ヴィル「そうなんだよ」

エレナ「・・・・・・シオン。番人を倒したんだから、奥の魔石を入手して、結界を張らないと。グズグズしてると、他の人達に取られちゃうよ」
シオン「おっと、そうだったな。じゃあ、みんな、行こう」
 そして、シオン達のギルドは-さらに奥へと進んでいった。

 

トゥセ「あーあ。惜しかったっすね」
アーゼ「いや、あんまし、惜しくは無いと思うぞ。むしろ、予定調和-的というか」
トゥセ「あんま、悲しくなる事、言わないでくれよ」
アーゼ「わ、悪い」
ヴィル「まぁ、ともかく、もう一段落したら戻ろう。幸い、他のギルドも死者は居ないみたいだし」
 とのヴィルの言葉に、皆は頷(うなず)いた。

 

 ・・・・・・・・・・
 その傭兵は番人攻略の笛を聞き、いらだっていた。
傭兵「クソッ、先を越されたかッ!」
部下「し、仕方ないですよ、今回は、剣聖が居たんですから」
傭兵「うるせぇッ!何で剣聖が-こんなへんぴな田舎に居るんだよッ!おかしいだろッ!くっそッ!どうせ、圧倒的な力を見せびらかして、俺達を見下してんだッ!そうに違いねぇッ!」
 と叫び、壁を思い切り叩いた。
 すると、壁が崩れ、隠し通路が出てきた。
傭兵「お・・・・・・おいおい、こりゃあ、ひょっとして、ひょっと
   するんじゃねぇか?」
部下「ヒョウタンから駒(こま)ってヤツっすね」
傭兵「だな。ともかく、先にすすも・・・・・・」
 そこまで言って、傭兵は言葉に詰(つ)まった。
 その視線の先には、一体の何かが居た。
傭兵「ご、ゴブリンだッッッ!」
 と、傭兵が叫ぶや、その年老いた魔族は-さっと逃げ出した。

 

 ・・・・・・・・・・
 笛の音が鳴った。
 それはゴブリンの出現を意味する笛だった。
ヴィル「この笛は・・・・・・」
アーゼ「ゴブリン・・・・・・・」
 すると、シオンが駆けだしてきた。
シオン「先輩、今の笛ッ!」
ヴィル「あぁ・・・・・・。信じたくは無いが、ゴブリンが遺跡に居るらしいな・・・・・・」
シオン「ともかく、手分けして探しましょう」
ヴィル「・・・・・・ああ」
シオン「では、俺達は右へ、先輩達は左をお願いします」
ヴィル「分かった・・・・・・。行くぞ、お前ら」
 そして、ヴィル達は左に進むのだった。

 

トゥセ「しかし、妙ッすね。ゴブリンの気配なんて全然、感じなかったっすよ」
アーゼ「確かに・・・・・・。居るとしても、少数なのか?」
ヴィル「・・・・・・ひそかに隠れて暮らしていたのか?」
 と、ヴィルは小声で呟(つぶや)いた。
 すると、カシムが口を開いた。
カシム「よろしければ、居場所を特定してみましょうか?」
ヴィル「出来るのですか?」
カシム「恐らくは。今、迷宮は最深部が封印され、気が弱まっています。比較的、探知しやすいと思われます」
ヴィル「・・・・・・頼みます」
カシム「はい。では、しばし-お待ちください」
 そう言って、カシムは人差し指を自らの額に当て、目をつむった。
 それから、数十秒後、カシムは突如(とつじょ)、目を開いた。
カシム「分かりました」
ヴィル「本当ですか?」
カシム「はい。ただ、場所は-ここからだと遠回りになります。それで、この迷宮の近道を利用しようかと思います」
トゥセ「近道、ですか?」

カシム「はい。ただし、これは迷宮の時空の歪みを利用する繊細(せんさい)な方法です。ですから、目をつぶったままでないと利用出来ません」
ヴィル「・・・・・・それ以外、方法は無いんですか?」
カシム「近道は-それだけです。私が手を引くので、全員、手を繋いでください。もし、よければ、ですが」
 とのカシムの言葉に、ヴィルは一瞬、考えこんだ。
ヴィル「お願いします」
トゥセ「まぁ、少し、怪しいですけど、仕方無いですよね」
アーゼ「こら、アーゼ。失礼だぞ」
トゥセ「あ、す、すいません」
カシム「いえ。普通なら信じて-もらえないでしょう」
ヴィル「カシムさん、早速、お願いして-よろしいですか」
カシム「はい」
 そして、ヴィル達は目をつむり、カシムの導きに従った。

 

 ヴィル達は目をつむったまま歩き続けていた。
カシム「ここから歪みに入ります。絶対に、目を開けないでください」
モロン「だ、団長、少し、怖いよ」
ヴィル「大丈夫だ、モロン。俺を信じろ」
モロン「うん」
カシム「では、参ります」
 そして、カシム達は壁の中に入っていった。
 そこは異質の空間だった。
 ヴィル達は、重力と時の感覚が狂うのが分かった。
トゥセ「な。なんじゃこりゃッ!大丈夫か、これ?」
カシム「あと少しですッ!絶対に目を開けないでください」
 そして、カシム達は先を進み、壁から抜け出た。
カシム「もう大丈夫です。ゆっくり目を開けて下さい」
 すると、辺(あた)りは白い大理石で出来た通路になっていた。
ヴィル「これは・・・・・・普通の迷宮じゃないな」
アーゼ「ですね・・・・・・」

カシム「ヴィルさん、ゴブリンの気を二つ感じます。こちらです」
ヴィル「お前等(まえら)、戦闘態勢に入れ。カシムさんは、戦えますか?」
カシム「身を守る程度なら」
ヴィル「なら、モロンの傍(そば)に居てください」
カシム「承知しました」
ヴィル「じゃあ、進もう」
 そして、ヴィル達は先へと進むのだった。

 

カシム「そこです」
 と、カシムは-ただの通路の前に立ち、言うのだった。
ヴィル「隠し扉・・・・・・。開けよう」
 そして、ヴィルは隠し扉を開いた。
 そこは一つの部屋となっていた。
 その奥には二体の小さなゴブリンが居た。
 すると、年老いたゴブリンが口を開いた。
老人ゴブリン「待ってくだされ・・・・・・ワシらは、人間と争う気は無いんじゃ」
トゥセ「ご、ゴブリンが-しゃべった」
ヴィル「・・・・・・争う気は無いと?」
老人ゴブリン「ワシと-この子は一緒に暮らしてきた。人に迷惑をかけた事は無い。本当だ。信じてくれ」
ヴィル「・・・・・・」
アーゼ「団長?」
カシム「・・・・・・このゴブリンの言っている事は本当かと思われます。気に-よどみが無い」
トゥセ「ま、待てよ。だからって、ゴブリンを放置じゃマズイだろ?」
ヴィル「・・・・・・そっちのゴブリンは・・・・・・子供か?」

老人ゴブリン「そうじゃ。ワシの血縁では無いが、今年、13となったばかりじゃ。ワシと違い、人間の言葉は話せん。お願いじゃ、ワシらをそっとして-おいてくれ。魔石なら少しある。これで、どうか許してくだされ・・・・・・」
 そう言って、老人ゴブリンは魔石の入った袋を差し出した。
モロン「団長・・・・・・許してあげれないの?」
ヴィル「俺は・・・・・・俺は・・・・・・」
 ヴィルの脳裏に記憶が蘇(よみがえ)った。
 多くの仲間の死・・・・・・。
『殺せッ!殺せッッッ!あのゴブリンども-をブチ殺せッ!』
『隊長ッ・・・・・・隊長ッ・・・・・・死にたく無い・・・・・・死にたく無いです・・・・・・』
『いやだ、いやだ、いやだッ、母さんッ・・・・・・』

 

 そして、記憶は-さらに深層へと至(いた)った。
 血まみれで笑う男。 
 その男に対し、ヴィルは斬りかかったのだった。

 

カシム「ヴィルさん?」
 カシムの声で、ヴィルの意識は現実に戻った。
ヴィル「あ、ああ・・・・・・」
 と、ヴィルは朦朧(もうろう)としながら答えた。
 ヴィルは心臓が早鐘(はやがね)を打つのを感じた。
トゥセ「団長・・・・・・」
 と、トゥセ達は心配そうに見守った。
 すると、足音が響いた。
アーゼ「ま、まずいッ」
 すると、傭兵達が駆けてきた。
傭兵「ッ、そこかッ!」
 傭兵達は、ヴィル達を押しのけ、隠し部屋へと入りこもうとした。
ヴィル「や、やめろッ!」
 ヴィルは-そう叫び、傭兵を押し返した。
傭兵「は?はぁ?お前、手柄を独り占めにする気か?ふっざけんなッ!ぶっ殺すぞッ!」
ヴィル「違うッ!か、彼等(かれら)は敵じゃない。敵じゃないんだ。非戦闘員だッ!」

傭兵「ひ、戦闘員―?なぁに、言ってんだ、こいつ?頭にウジわいたか?ともかく、どけよ、こんな雑魚(ざこ)ゴブリン、大した手柄じゃねぇだろ。なんなら、その分の報酬はやるから、俺にゴブリンをぶっ殺させろ。いいな。お前には、酒場の賭(か)けで金をもらってるからやっぱ、それで許してやる」
しかし、ヴィルは-どこうとしなかった。
ヴィル「彼等(かれら)は敵じゃ無い・・・・・・」
 そのヴィルの言葉に、傭兵は目を据(す)わらせた。
傭兵「おい、おいおいおい・・・・・・反逆者か、お前ら?」
ヴィル「違う、俺はッ」
傭兵「違わねーだろッ!ゴブリンの味方するなんてよッ!ぶっ殺すッ!やるぞッ!」
 との傭兵の言葉に、部下達は抜刀した。
ヴィル「やめろッ!」
傭兵「やめねーよッ!」
 そして、傭兵はヴィルに剣を振りおろした。
 しかし、次の瞬間、傭兵の手首は宙(ちゅう)を舞った。
 そして、手首に付いた剣が地面に-ぶつかり、音を立てた。
傭兵「は?はぁ?お、俺の、俺の手・・・・・・俺の右手・・・・・・?」
 そこまで言って、傭兵は気絶した。
部下「た、隊長ッ!てめぇらッ!」

 しかし、他の部下達も、トゥセとアーゼの攻撃で-あっさりと
気絶するのだった。
ヴィル「ハァ、ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
 と、ヴィルは荒い息をあげていた。
モロン「だ、団長・・・・・・どうするの?」
ヴィル「・・・・・・お前達、ここで-お別れだ・・・・・・俺は、このゴブリン二人を安全な所へと送り届ける。お前達は別のルートで逃げろ。いいな」
 しかし、トゥセ達は頷(うなず)こうとはしなかった。
ヴィル「何してるッ!早く逃げろ。お前達だけなら、逃げ切れるだろ?」
トゥセ「あの、団長。そういうの無しにしませんか?いまさらっちゅうか」
アーゼ「そうですよ。俺達、仲間でしょう?」
モロン「ヒヨコ豆-団は、いつも一緒だよ」
ヴィル「お前等(まえら)・・・・・・」
 そう言って、ヴィルは目をぬぐった。
ヴィル「ありがとな。一緒に逃げよう」
 とのヴィルの言葉に、トゥセ達は頷(うなず)いた。
 すると、老人ゴブリンがヴィル達に近づいて来た。

老人ゴブリン「あ、あの・・・・・・どうして?」
ヴィル「分かりません。ただ・・・・・・あなた達を見殺しに出来なかったんです。だって、多分・・・・・・あなた達も俺達と同じヒト・・・・・・だから」
 との言葉に、トゥセ達は頷(うなず)くのだった。
老人ゴブリン「おお、おお・・・・・・これは奇跡か・・・・・・。まさか、まさか、彼(か)の地で-このような冒険者-達と出会えるとは・・・・・・」
 すると、老人ゴブリンの胸に矢が生えた。
 見れば、傭兵が倒れながら、弓を片手にしていた。
傭兵「ざまーみろ・・・・・・」
 そう言って、傭兵は完全に気絶した。
 そして、老人ゴブリンは地面に倒れた。
 その体から血が-とめどなく流れ、その生は失われようとした。
 それを見(み)、幼いゴブリンは泣き叫びながら、老人ゴブリンに駆け寄った。
 そして、血で汚れるのも気にせず、幼いゴブリンは老人に必死に語りかけるのだった。
 それに対し、老人ゴブリンは何かをつぶやき、そして、息絶えるのだった。
トゥセ「嘘・・・・・・だろ?」
 と、つぶやく事しか出来なかった。
 あたりには幼いゴブリンの泣き声が響いた。

 すると、ヴィルは幼いゴブリンに近づいた。
 それに対し、幼いゴブリンは怯(おび)えて後ずさった。
 ヴィルは幼いゴブリンに対し、両膝(りょうひざ)を着き、頭を下げ、言うのだった。
ヴィル「俺はッ、俺は、あんたを守る。あんたを守る事を騎士として誓うッ!この老人のゴブリンのぶんまで-あんたを守る事を誓う。だからッ、ごめん、ごめんな・・・・・・」
 と、ヴィルは泣きながら、誓うのだった。
 それに対し、幼いゴブリンはヴィルを信じたのか、ヴィルの
腹に顔をうずくめ、泣きじゃくるのだった。
 それは神聖なる光景だった。
 本来、憎み、殺し合う人間とゴブリンが触れ合っているのだった。
カシム(これだ・・・・・・これだったのだ。私が、この地に導かれたのは。精霊達は、私に-これを見せたかったのだ。そして、これこそが私の運命なのだ。彼らと共に、旅をし、彼らの運命を助ける事。それこそが、私の生まれてきた理由なのだ)
 と、カシムは悟るのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

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